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目も原因

めまいと目の関係について詳しく書かれている本は一部の専門書を除いてほとんどありません。多くの医師あるいは患者さんは、 「めまいと目とは関係がない」とか、「目がめまいの原因とは結びつかない」とか考えているようです。ところが目が直接的、あるいは間接的にめまいの原因に関連していると考えざるを得ない場合があります。 専門書の中では、「視性めまい」、「視覚性めまい」、「視運動性めまい」などと表現されていますが、動物実験に基づいた考え方で、実際の患者さんにあてはめて考えるのは難しい内容です。 ここでは、身近な日常生活との関連性からいくつかの例をあげます。めまいの原因を見直すひとつの材料として下さい。

1.忍者屋敷

1.忍者屋敷

目がめまいの原因となりうるかを考える時に一番判り易いたとえが「忍者屋敷」です。「忍者屋敷」とは、忍者がいろいろと工夫を凝らした手裏剣や水上歩行器具などの忍者小道具類を展示したミニ博物館のようなもので、三重県の伊賀、滋賀県の甲賀にあります。 見物者の多くは、ホーホー、なるほど、といった按配で小一時間楽しみますが、なかには見物中に「めまい」や頭痛を感じ、それに我慢できずに退出される方がいます。 何故でしょうか?そこには、小道具以外に天井や敷居にやや大がかりな仕掛けがされているからです。具体的には、天井や柱、梁とのバランスがちょっと見には気が付かない程度に歪められています。 私が友人と訪れた時に、その友人が強いめまいを訴えました。 「一寸、目を閉じてみては・・・」と助言しましたところ約10分ほどしてめまいは消失しました。 似たようなことは、忍者屋敷を訪れた方なら経験されているでしょう。目から入る情報がめまいの原因あるいは誘因となっているひとつの証拠だと言えましょう。

2.阪神淡路大震災

忍者屋敷と同じような現象は、阪神淡路大震災の後でも生じています。半壊になった家屋に入った被災者の方の多くは、約2、30分後に、グラグラするめまいを感じて吐気を催しています。震災にともなった恐怖の記憶からくる心的外傷が誘発されたためとも解釈できますが、忍者屋敷の場合と同様に、閉眼することにより症状が軽快することが多く、やはり、「目からのめまい」のひとつと考えられます。勿論、この場合には、自分自身が立っている家屋の床の歪みや傾きも体の平衡機能障害を生じて、目以外に全身が関係していることは無視できません。

地震被害の取材のために神戸を訪れたマスコミ人たちも同様の経験をしています。あるマスコミ人が当院を訪れた際、「あのときは余震かと思いましたが、神戸市街地のビルが色々な角度で歪んだり倒れかかっていたから、視覚異常がめまいの原因のように考えられますね」と話し合ったことを懐かしく思い出します。 治療を始めてもなかなかめまいが治らなかったひとりの女性患者がいました。身の回りに何か体のバランスを障害している原因があるはずだ、といろいろと相談した結果、一緒に来られたご主人が、ご自宅のリビングの床で、ゴルフボールが勝手に転がることがあると言われました。忍者屋敷と同じような理屈で、部屋に歪みがあることに気付かれ、その修理をしてからめまいは治っています。滅多にないことでしょうが、こんなこともめまいを治す上で考える必要があります。

2.阪神淡路大震災

3.パソコン

現代社会の中で、もっとも不可欠なもののひとつがパソコンでしょう。

① 疲れ目

会社勤務の人では1日5時間以上はザラで、8時間、12時間以上パソコン操作をするという人も少なくありません。この場合、当然眼精疲労といわれる状態が生じています。疲れ目自体がめまいの直接的原因かははっきりしませんが、何らかの悪影響があることは確かでしょう。このような考え方からは、疲れ目対策もめまいの治療上に必要です。

② 目からくる首こり、肩こり

めまいの原因のひとつとして、首が重要な役割をもっていることは、このホームページの随所で述べています。パソコン作業中の首を少し前につき出した姿勢を長時間維持することや、キョロキョロと目を動かせる動作は当然、首のコリを生じます。目の疲れ→首→脳や耳への影響というメカニズムを考える必要もあります。

③ 電磁波?

パソコンでもうひとつ忘れてはならないのは、電磁波や画面の周波数が脳に及ぼす影響です。電磁波の危険性については、賛否両論があり、何処までヒステリックに考えるかにはまだまだ問題が残されています。

4.ポケモン事件

目からの情報が脳神経に影響していることを理解するためには、1997年12月16日に起きたポケモン事件を思い出して下さい。この事件は、テレビアニメ「ポケットモンスター」を見ていた500人以上の子供たちが、けいれん、意識障害、めまい、不快感を催して病院に運ばれた事件です。この事件をきっかけに発足した厚生省光感受性発作研究班の報告によれば、1秒間に3回以上の赤い光の点滅が脳の視野領域の機能障害を生じたものと考えられています。 めまい患者さんのなかにも、暗いところから突然に明るいところに出た場合に似たような症状になることがあり、理屈は似ているでしょう。 52才の女性ですが、めまいと同時に光がまぶしいとの訴えがありました。その女性は、結局、色の薄いサングラスをしてもらい、めまいも治っています。

5.高所恐怖症(空間認識障害)

「めまい」という病名を一躍有名にしたのはヒッチコック監督作の映画「めまい」でしょう。この映画で扱われた「めまい」は高所恐怖症というべきものですが、一般のめまい患者さんの中にもたまに同様の症状を訴える方がいます。 閉所恐怖症という病気もあり、狭い空間に恐怖を感じます。具体的には、MR検査のための円筒型の狭い空間に入ることによって生じる恐怖感です。ガンガンと鳴る音も恐怖を高めている可能性がありますので、高所恐怖症みたいに閉眼すると治ることが多いという訳ではなさそうです。 ここで説明しました高所恐怖症も閉所恐怖症のいずれもが自分自身の置かれていた空間についての認識障害といえるでしょう。

6.左右差

めまいには、目に限った訳ではありませんが、耳や姿勢の左右差が関係しています。目の場合、視力や視野の左右差、斜視も慢性的には視覚異常や疲れ目を生じて、めまいに関係していると考えられます。中年以降の患者さんの場合には、いつの間にか左右の度の合っていない老眼鏡をしていることにも注意が必要です。左右の白内障があって片方の目の手術をした場合、一時的なめまいの原因になりますが、これは突然に生じた視力の左右差によるものでしょう。

7.その他

目の前で振り子を振って、目をキョロキョロして振り子やメトロノームを追跡させるようなことから、めまいの基本的症状としての眼振が生じる状況は、視運動性眼振と呼ばれ、これに似たような状況は、車の運転中、テレビに熱中している場合などに生じます。ただ、この場合、眼球だけが動いているのか、目の動きと同時に首も回転していることが関係していることも無視できません。 さらに、専門的な理論として、耳にある三半規管と視覚入力の脳に対する神経伝達のズレが生じて、自分のおかれた位置に対しての三次元的XYZ軸を構成する空間認識障害が、めまい、ふらつきの原因となっていると考えられています。いずれにしても、「目からのめまい」に関与するのは目だけの障害かの判断が難しい場合が少なくありません。

7.その他

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